横振り刺繍の奮闘記 Vol.1

 

横振り刺繍ミシンを迎えました

去年、ひょんなタイミングでJUKI LZ271を譲り受けました、ただその時は頭だけでしたので、机とモーターがなく保管しておりました。

ハンドルミシン刺繍をしているため、横振り刺繍をする予定は全くなかったのですが、手に入ったのも何かの運命だと思い、この度、挑戦してみようと思います。どちらも古いミシンを使った独特の刺繍が表現できるので、個人的はとても楽しみです。

また独学でどこまで熟練できるのか自分自身への挑戦でもありますし、コラムとしても面白いコンテンツだと思います。ぜひ奮闘記を楽しんで頂ければと思います。

横振り刺繍とは

引用:http://www.kasamori.co.jp/ 笠盛さまHPより

横振り刺繍とは、針が左右に動く横振りミシンを使って図案を見ながら職人の手で直接生地に柄を起こす日本独自の技法で、手振り刺繍とも呼ばれます。
横振りミシンは、足元のペダルを踏み込む強さによって刺繍の振り幅が変化します。
これを上手く扱うには、長い年の経験と腕が必要です。和装で用いられることが多いのですが、少数ロットの柄や名前などの一点物を縫うときには横振りミシンで縫い上げることがあります。
手で直に縫うので、ジャカード刺繍では必須のパンチカードといわれる型をつくらずに縫えるといった利点がありますが、手刺繍のためにどうしても生産性の面で劣ってしまいます。扱うことができるのは熟練の職人ばかりで若手の職人があまりいないため、若手育成が今後の課題と言えます。
また現在稼動できる横振りミシンが少ないのも問題点の一つです。

ミシンの機構としては現代の工業用ミシンと比べるとかなり独特で、送りと押さえがない点です。逆にこの機構がないために自由に刺繍することができると言えると思います。一見すると余計な機構を無くすことで逆に自由になる、そんな発想でしょうか。

ただこの自由にできる、ということは言葉そのものでまっすぐ刺繍することや360度フリーに刺繍するには全て縫い手の手のコントロールのみ、に依存するため、かなり熟練が必要であると想像できます。

横振り刺繍を使った作品や製品

代表的なのはスカジャンになると思います。和洋折衷なデザインが特徴ですね。

あとは花々を散りばめた細かいグレデーションでしょう。海外の方々はこの刺繍が多いように思えます。

今ですと横須賀のドブ板にはまだ数店ではありますね。スカジャンを横振り刺繍で仕上げている店舗さんもあります。

使ってみてわかったこと

やはり難しいです。刺繍している様子はYouTubeなどにはたくさんあるので、どのように刺繍していくはは予想ができていました。

またジャガード刺繍機を当店では使うため、横振り刺繍と似ている技法や刺繍の作法は多くありました。また意外だったのは、横振り刺繍は思ったより厚みが出ることでした。

ジャガード刺繍との違い

明らかに違うのはストロークの幅の違いです。ジャガード刺繍は機械なので、大きいな振り幅は構造的にできません。ジャガードの機械の頭は動ける範囲は決まっています。これが横振り刺繍とは大きく異なります。

同じレーヨン糸を使うのですが、ストロークが自由に大きく取れる横振り刺繍では、幅が多いサテン刺繍ができます。なおジャガード刺繍では大きな振り幅を実現するにはタタミ刺繍をします。

なのでタタミ刺繍せざるを得ない表現をサテン刺繍で表現できる、これが横振り刺繍との違いです。横振り刺繍ではふっくらしたグラデーション刺繍が表現できますね。

ただ細かい文字の刺繍や大量生産はジャガード刺繍一択になると思います。

ハンドルミシン刺繍との違い

それぞれ機構が異なるので全くの別のミシンといえます。今のところの僕の主観です。

ミシンには得意不得意があり、できることできないことがハッキリと分かれますね。

ただこのできることできないことをしっかりと把握していると、表現したい作品があった場合に機械の取捨選択ができますし、ここはハンドルミシンで、ここは横振りで、さらに大量に刺繍するならジャガード刺繍、なんて判断ができますね。

ハンドルミシン刺繍

送り機構なし、押さえあり、フリーモーションで刺繍できる、糸目はチェーンステッチのみ、ミシン下部のハンドル操作が必要。糸はアクリル、コットンなどが使える、ただし細い糸の使用には向かない。

横振り刺繍

送り機構なし、押さえなし、フリーモーションで刺繍できる、下糸(ボビン)がある、基本的には刺繍枠を生地にセットして刺繍する、糸は細かい糸(レーヨン)が使えるので、光沢があり細かい刺繍が表現できる、アクリル糸などの太い糸には向かない。

針を固定して刺繍と枠を固定して刺繍がある

枠を固定して刺繍

これが僕が想像していたいわゆる横振り刺繍です。枠を固定する場合は膝当てを操作して、刺繍幅を刺繍していく操作になります。膝当てを操作して刺繍する幅を調整することで、生地に刺繍される幅を決められることは想像通りで、実際にそのようにできました。

針を固定して刺繍

難しいのは枠を動かしながら刺繍する技法です。これは横振り刺繍の特徴にある細かい入り組んだグラデーションを実現するには必須だと感じました。

枠を動かしながら同じ幅に針を落とすこと、これが難しい。サーボモーターを低速にしても思ったより難しいです。

リズムカルにタンタンと針は落ちますが、そのタイミングで枠を上下に動かしていくのはかなり練習がいると思いました。

まだまだ触ったばかりなので、練習を重ねて綺麗な刺繍ができるように頑張ります!

この記事を書いた人

渡邉 太地(Taichi Watanabe)

Rainbow Adventure Design代表

1979年5月26日生まれ。レコード会社勤務を経て、Rainbow Adventure Designを起業。2024年刺繍製品に特化したRainbow Adventure Embroideryを設立。

プライベートでは愛犬のゴン太(パグ)を溺愛している。

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